私の金沢百景

第5景 馬坂(扇町)

 
 小立野台宝町にある藩主前田家ゆかりの寺「宝円寺」は閑静な住宅街の中にある。

 その門前通りの突き当たりから左に急な下り坂が続く。ここは馬坂といい昔農民が馬を引いてこの坂を登ったのがその由来らしい。

 歩行者専用の狭い坂だが綺麗に整備されている。坂途中から見える景色がとても良く、向かいに卯辰山が迫り、手前には金沢特有の黒瓦の街並み、左手遠くには内灘大橋や医科大学の建物まで見える。

 屋根よりちょっと高い目線のその景色は子供の頃に家の屋根に登ってまわりを眺めたそんな懐かしい感覚が味わえる。

2003年9月28日撮影

宝円寺

 現在の坂はまだ真新しい感じだが坂の上の高源寺そばの地蔵や中腹にある祠の中の苔むしたお不動さんが歴史を語ってくれている。

 お不動さんの上の龍の口から絶えず水が流れ落ちておりその前に誰が供えたのか花が生けてあった。
祠は朽ちたような建物だが今もなおその信仰は続いているらしい。

高源寺そばの地蔵

苔むした不動尊

卯辰山
 
 またこの坂に数軒の一般住宅が面している。坂の3分の2は街の中のぽっかりあいた閑静な空間であり下のほうは住民の生活圏の真っ只中だ。そのギャップがまた面白いのがこの坂の特徴だ。

この付近の住民でないかぎりほとんど利用することがないような目立たない場所にある坂だがそこから見える景色やあたりの空気は金沢らしい風情を感じさせてくれる。


おわり

戻る