参照:デンタルダイヤモンド90年12月号
局所麻酔は日常的に行われるものであるが、患者側の要因などによって全身異常を起こすことがあるので、注意が必要である。
偶発症の原因としては、既に持っている全身疾患の増悪、注入した薬剤によるもの、さらに、精神的要因によるものがある。
<注入した薬剤によるもの>
○局麻薬の中毒
○局麻薬によるアレルギー
○局麻薬に含まれる溶媒によるアレルギー
○代謝産物による反応
○局麻薬に含まれる血管収縮薬による反応
<局麻薬および添加物による全身異常>
局麻薬による中毒は、血中濃度が一定以上に上がったときに起こる反応で、全身痙攣が特徴。しかし実際には、症状は多彩で、他の全身異常との判別が難しいこともある。
安全使用量は、使用条件によって異なるが、エピネフリン添加リドカインの場合で総量300mg(歯科用キシロカイン・カートリッジで15ml以内)。
循環器疾患患者では循環系の偶発症を起こしやすく、また肝、腎機能障害、心不全、血漿蛋白の低下、貧血などの患者では、リドカインの投与量が少なくても中毒を起こしやすいと考えられる。
<局麻薬によるアレルギー反応>
局麻薬によるアレルギー反応には即時型(アナフィラキシー型)と遅延型(細胞性免疫による遅延型)があるが、歯科医師にとって重要なのは即時型のアナフィラキシー反応である。
典型的なアナフィラキシー反応では、薬剤投与後数分で胸の苦しさを訴え、紅斑、蕁麻疹などの皮膚症状とともに嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状が認められる。さらに、喘息様症状、喉頭浮腫による気道閉塞を来たし、ついて循環器症状が出現する。顔面蒼白、動悸、頻脈、不整脈などが見られ、意識喪失と心停止に至る。
しかし、リドカインによるアレルギーというものは少なく、異常を起こした症例の多くは、神経性ショック、エピネフリンの過量反応、過呼吸症候群であろうと判断されることが多い。
<血管収縮薬の過量反応>
歯科用キシロカイン・カートリッジには、8万倍エピネフリン(1mL中に12.5μg含有)が添加されている。これは交感神経を刺激する薬剤であり、局所投与時でも投与量が増えるにしたがい、脈拍の増加、血圧の上昇、心拍出量の増加が現れる。
健康成人が耐えうるエピネフリンの最大使用量は200μgといわれている。また、40μg以下の投与量では全身への影響はほとんど無く、心疾患患者に対する許容量の上限とされている。
しかし、エピネフリン投与による反応は健常人でも個人差があり、少量の投与でも極端な心悸亢進や息苦しさ、不安、興奮、ふるえ、顔面蒼白、頻脈、血圧上昇が見られる場合があるので、十分な注意が必要である。
この異常反応は、注射後数分して起こり、通常は2〜3分後には消えるが、局麻薬自体による異常反応とは異なるので、その旨を患者に説明しておく必要がある。
<精神的要因による全身異常>
歯科治療時、不安感や緊張感が強いと全身異常を起こしやすい。
異常の代表的なものは、疼痛性ショックと、過換気症候群。
過換気症候群を起こしやすい患者には、笑気吸入鎮静法は使用しないほうがよい。
付 録
歯科用キシロカイン・カートリッジの添付文書より
劇薬・指定医薬品
禁 忌
(1)本剤又はアニリド系局所麻酔剤に対し過敏症の既往歴のある患者
(2)血管収縮剤に対し過敏症の既往歴のある患者
(3)高血圧、動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進、糖尿病、血管痙攣のある患者
[これらの症状が悪化するおそれがある]