ヒ素の知識



<ヒ素とは??>

(参照:理化学辞典・岩波書店、
医科薬理学・南山堂)

As(arsenic)。原子番号33、原子量74.92。天然に遊離の状態で産出することもあるが、多くは硫化物である。世界的に見ると、中国での生産量が多い。
化合物としては3価のものと、5価のものが安定であり、殺虫剤、木材の防腐剤などの原料として使われることが多い。

摂取した場合の毒性については、5〜50mgで中毒症状をおこし、致死量は5〜7mg/kg。毒性発現の機序は、体内でタンパク質と結合しやすく、タンパク質である酵素を阻害すること、また、タンパク質を合成する過程に悪影響をあたえること、などによる。

医科においては、かつては駆梅剤(お分かりにならない方のほうが多いと思いますが・・)の原料として使われ、また一部の熱帯病の治療にも使われたが、ペニシリンの開発によってそのような使命は終わった。

歯科においては、毒物指定とはなっているが、ヒ素化合物を含んだパスタが使われることがある。その使用には厳しい条件が付けられているが、局所麻酔剤が奏功しない場合や、循環器疾患等を有しているためにその使用を避けたい場合は有益である。

パスタはアルゼンという商品名で、含まれるヒ素化合物は三酸化二ヒ素であり、この成分がパスタ全体のおよそ45%を占める。

水道水の基準値:0.01mg/l 
排水の基準値 :0.1mg/l 
(上の数値は、歯髄失活除痛法を顧みる・第一歯科出版より)

*歯科で使われているものは、通常「亜ヒ酸」という名称で呼ばれるが、三酸化二ヒ素が20 ℃ で水 100g に約 2g 溶けて亜ヒ酸となる。

**アルゼン(正式な商品名は「ネオアルゼンブラック」)を窩洞に貼付すると、24〜48時間で知覚が麻痺する。パスタの使用量は必要最小限にとどめること。貼付時間は、決して72時間を超えないこと。貼付後の仮封は厳重に行い、絶対に漏洩が起こらないようにすること。

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[ある先生の、亜ヒ酸パスタの使用法]
私は24時間後、チャンバーオープンさせ、この時点では歯髄は除去せずパラホルムパスタ(ペリオドン)を貼薬します。そして2〜3日後に失活歯髄を除去します。パラホルムに替える理由は歯髄を固定させたいからです。そのほうが失活をコントロールさせやすいですからね。

亜批酸糊剤の量は耳かきすりきり一杯分くらい。貼付前にはエナメル質カリエスは完全に除去させておくこと、軟化カリエスはスプーンエキスカで疼痛が出ない程度に除去しておくこと、仮性露髄部分にできるだけ薄く広く糊剤を貼付しすみやかに合着用燐酸セメントを無圧的に裏層、硬化するまで防湿を保つこと。
さらにその上から接着性レジンセメントあるいはアマルガムで充填。とにかく漏洩には十分すぎるほど気をつけるべき。



<吸収と代謝>

(参照:医科薬理学・南山堂、
Arsenical Pesticides・フロリダ大学
/Donald P. Morgan,M.D.,Ph.D.)
以下、同じ

ヒ素化合物は皮膚から容易に吸収され(3価化合物のほうが、より吸収されやすい),局所に壊死を作る。しかし、皮膚から吸収されて中毒を起こすことは稀で、中毒は主に経口摂取によって起こる。

体内ヒ素量は14〜21mgといわれ、摂取量は1日約1mg(米国人の場合)と報じられている.体内では肝・腎・消化管,脾,肺などに分布するが神経,筋組織への分布は少なく,SHを多量にふくむ含ケラチン組繊(毛髪や爪)に高濃度に分布する.尿排泄は5価ヒ素剤では速やかで蓄積も少ないが、3価の場合は経口投与後2〜8時間で始まり,完全に排泄されるまでに約10日を要するので反復投与では蓄積毒性を現わすようになる.
(日本人は、海草をよく食べるが、これにヒ素が多く含まれるので、日本人ではヒ素量が多いと思われる/筆者)

経口摂取されたヒ素化合物の吸収のされ方は、その物理的状態や、溶解性、胃酸のpH、また腸内細菌叢等に影響を受ける。一旦吸収されたヒ素は、神経組織、血管、肝臓、腎臓、その他の組織の細胞に障害を与える。

<急性中毒>

急性中毒の場合は通常は摂取後1時間以内に起こるが、ときには数時間たってから発症することもある。重症患者の場合は、にんにく臭い呼気と排泄物から、この中毒が疑われる。

腸管系の影響としては、口腔、咽頭、喉頭に炎症を起こし、焼けるような腹痛、口渇、嘔吐、米のとぎ汁のような下痢あるいは、血性の下痢を起こす。

腎臓の障害によるものとしては、蛋白尿、血尿、糖尿、その他が起こる。中枢神経系では、頭痛、目眩、脱力、錯乱、昏睡、痙攣などが起こる。心血管系では、ショック、チアノーゼ、不整脈が起こる。造血組織も破壊され、1〜3日以内に死亡することが多い。

<慢性中毒>

繰り返し摂取した場合には、症状がはっきりと出ないので、診断が難しい。
皮膚では角化症、色素沈着などが起こり、顔面やまぶた、くるぶしなどに皮下浮腫が起こり、爪に白い線状ができ、また、爪や頭髪が脱落することもある。口内炎、食欲不振、体重の現象は、よく見られる。知覚異常、疼痛、麻痺、運動失調など、末梢神経の異常もよく見られる。肝臓の障害では、肝臓の肥大、黄疸が見られる。その他には、心電図の異常、貧血、白血球減少症、血小板減少症が見られる。

また、多量のヒ素を長期にわたって摂取した場合には、皮膚癌を起こし、肺癌の発生率を高くする。まれに、眼筋麻痺や慢性頭痛、言語障害など、脳の障害による症状を起こすことがある。

適切な治療が施されないときは、次のような後遺症がおきる可能性がある。(歯髄失活除痛法を顧みる・第一歯科出版より)
       先天異常 ……… ダウン症候群
       神経系  ……… てんかん・精神薄弱・ポリオ様麻痺
       呼吸器  ……… 副鼻腔炎・鼻炎・慢性扁桃炎
       消化器  ……… 肝障害の疑い・歯列不整
       血液   ……… 貧血
       感覚器  ……… 眼屈折異常・神経性難聴・耳管閉塞・神経性耳鳴り
       皮膚   ……… 湿疹その他の皮膚疾患
       その他  ……… 起立性調節障害



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